本太風土記

<テーマ−祈り>
Vol.4

法然 祈りについて

法然上人はご存じのように日本の浄土宗の宗祖であり、専ら念仏を修することをすすめました。しかしまた、大変な学匠でもあり、明晰な頭脳の持ち主でした。
法然は、祈ることによって病も止み、命が延びることがあるなら、誰一人として病気になったり死んだりすることはないだろうと語っています。
祈ることによって病気が治っても、人は必ず死にます。これは避けられません。ですから大事なのは如何に往生するかですよね。法然に先立って、日本の浄土思想の草分けである、天台僧源信は『往生要集』を残しています。
源信はまた、今でいうホスピスみたいな死に行く人々のための念仏結社を指導していました。近頃は、『チベットの死者の書』もテレビで取り上げられて知られるようになりましたが、よい往生を遂げることが大切です。
僧侶は引導を授けるばかりでなく、たとえ不幸な生い立ち、突然の死、若死にであっても、その生きてきた意味を見いだして残された人々を慰めてあげないといけません。なかなかそこまで出来ないですが。
死にもまた、積極的な意味があります。残されたものたちが成長します。檀家さんを見ていても、突然、早く親を亡くしてこの人大丈夫だろうかと思っていたような人が、顔を合わせるたびに成長していくのが分かります。夫を亡くして、強くなったご婦人も少なくありません。
葬送儀礼を司るのは、僧侶の仕事のほんの一部です。昔は、看病も治病も僧侶の仕事で、加持祈祷と一体になってました。

祈りの実験

さて、祈りです。欧米の研究者はいろいろと面白い実験をします。例えば、多重人格者の研究です。沢山、測定装置を繋げて血圧や脈拍、血糖値などを計ります。
イメージすると面白いことに、人格が変わるごとに、同一の人間であるのにも関わらず、血圧、血糖値などが変わるのです。ということは、逆にいえば心の持ち方次第で、高血圧や高血糖などはすぐに改善されるということですよね。
また、ガン細胞を二つのグループに分けて、お祈りします。一つのグループにはガン細胞が死滅するようにと祈ります。もう一つの方には、もっと光あれとか、抽象的な祈りをします。するとどちらに、より効果が現れるでしょうか。
光明があるようになどと普遍的な祈りを捧げた方がガンに効果があるそうです。祈りというは、競馬で儲かりますようにとかいうのではなくて、神仏の前で真っ白になる、頭の中を空にするのが本当の祈りだともいいます。表白にいうように「乃至法界、平等利益」が本筋ではないでしょうか。

ホリスティック医学

イメージ西洋医学の考え方というか、処方は対処療法が中心になってしまいます。おそらく、人間の身体を部品と見て、油をさして調整する、余分なものは切っちゃえ、腎臓や心肺が悪ければ、機械にやってもらいましょう。機械じゃ気軽に外出できないから、ひとつ、臓器をもらってきてお取り替えしましょうということではないでしょうか。
もちろん、それと反対の考え方もありますが、お医者さん、医療従事者は基本的には、「病院医学」を勉強しています。公衆衛生、栄養学とかの知識は豊富なはずですが、病院での治療が専門です。
患者の方もそれを期待しています。特定の症状に対する治療、薬を望んでいます。
でもそれは再発する可能性が非常に高いのです。
そのためには、食生活からはじまって生活全体を改善しないといけません。仕事や家族関係まで見直さないといけません。そういう指導をされる先生もいらっしゃるでしょうが、むしろ患者の方が、そんなまどろっこしいこといわないで、すぐ効く薬をお願いしますということになるのでしょうね。スポーツ選手に仕事を止めろといっても無理ですから。
ホリスティック(全体性、全人性)医学というと難しく聞こえるけれど、それは未病を治すという東洋医学、養生訓の考え方ですよね。ある意味では当たり前のことですが、病院医学に対して、また、見直されてきています。対処療法的ではなくて生活や環境全体を見ていこうという考え方です。
さらに、オルターナティヴ・メディシン、代替医療といって、漢方や鍼灸、インド医学のアーユル・ヴェーダ、気功、ヨーガ、瞑想、呼吸法、アロマ・セラピーから温泉療法まで注目されています。アーユル・ヴェーダは生命の知識集成という意味ですが、「病院医学」に対していえば「生活医学」ということになりますね。
簡単にいうと代替医療は、自分たちの身体に、本来、備わっている自然治癒力を活性化させようということだと思います。こうした方面は、面白いことに、今では医療費の高い欧米で盛んなようです。イギリスでは手かざし気功と祈り(スピリチュアル・ヒーリング)が健康保険の対象に認可されて、一万人のヒーラーが活躍しているそうです。
日本人でも、アメリカやイギリスにヒーリング、あるいはチャネリング(神的存在にアクセスする技術)の講座を受けに行く人が多いようです。

イメージ手当てと気功

手かざし気功などというと胡散臭く思う人も多いでしょうが、歯が痛いと誰しも患部に手を当てます。少し治まります。手当てという言葉が示すように、最も基本的な治療行為ですね。これは、体温で暖めるからと考える人もいるでしょう。暖めた塗れタオルやホカロンにも効果はありますが、やはり目に見えない気が出ているから効くのでしょう。
ですから、少し離れていても効果があります。自分の心と体を呼吸でコントロールする内気功に対して、対面する相手に気を送るのを外気功と呼びます。
東京電機大学の町好雄教授は、こうした気の測定、気の研究でよく知られています。もっとも、気は何ボルト、何ワットというように直接計ることはできません。現段階では、気の影、あるいは跡を測定しているようなかんじです。
さらに、世の中には遠隔治療というのがあります。例えば、電話を通して気を送ります。ここまでいくと信じない人が多いと思いますが、町教授は今、実験で確かめようとしています。
最近、個人的なことでこのような気功師やヒーラー、チャネラーにお目にかかります。チャネラーというと、それ何って首を傾げる人も多いでしょう。一時期流行ったのはバシャールという宇宙の人?と通信してお告げを聞くというものです。宇宙イタコと揶揄されたこともありますが、実体としてはセラピスト、カウンセラーに近いのではないでしょうか。

魔女はコンサルタント

アメリカでは魔女がブームです。といっても箒にまたがったりはしませんし、悪い魔術は使いません。彼女らは様々な悩み事の相談に乗り、時には企業コンサルタントの様なことまでします。
チャネラーはある意味では最高の相談相手です。というのは、心理療法士でも企業コンサルタントでもそれなりの専門的知識を詰め込んで実践経験を積んで、個々のケースを詳細に分析して、初めて相談相手たりえますが、その扱う範囲は限られています。サイコ・セラピストに自分の会社の行く末を考えてもらうことは出来ません。
でも、チャネラーは詰め込み知識によるのではなくて、神的存在や魂に、直接聞いてしまいますので、事前の状況や経過説明なしに、すっと本題に入っていけるのです。こんな楽なことないですよね。優秀なチャネラーは実によく状況を読みます。自分のすっかり忘れていたことまで思い出させてくれます。彼ら、彼女らの仕事も、大きな意味でいうと全体性を回復するということを目指しているように思います。
心理療法に、子供時代に遡って傷をいやす退行療法や、生まれる前にまで遡る前世療法があります。注意しないといけないのは、セラピーの時に子供時代に虐待を受けたことを思い出して、それが現在のノイローゼの原因であると「発見」して癒されても、そうした事実がない場合が、しばしばあるということです。
チャネラーも、お約束としてあなたの前世は何々ですとお告げします。これは、自分の存在意義、今どうしてこのような状況に陥っているのかというのを説明するための装置です。立花隆じゃないけれど前世を証明するというのはほとんど不可能だと思います。しかし、自分の来歴や行く末を考える上では有効な神話だと思います。そして、全体の流れの中に位置づけて癒されるのです。

イメージ求む一芸坊主

チャネラーは自分の物語、自分の神話を語ってくれる人なのですね。そうして全体の中で位置づけてその意味を一緒に考えてくれるのです。でも、考えてみるとこれは、昔、僧侶がやっていた役割です。
密教は医薬の技術と一体だったと思いますが、宗教と医学は、割合早く分離したかもしれませんね。高僧は天皇や皇族、貴族、武士の良き相談相手でありました。もちろん、庶民の間に分け入って活躍した人も多いです。僧侶の役割のうち、医師、占師、声楽家、唱導師、教師、作家、書家、コンサルタント、カウンセラー、教誨師、保護司、民生委員などと様々な役割がそれぞれ分業化してしまったわけですね。
それで、今日、僧侶の専門として残されたのが葬式法事だけ、というのでは、ちょっと寂しいですよね。坊さんも全体性を回復しましょう。いろいろな役割を担っていきましょう。最近、一芸入試という言葉がありますが、坊主も何か一つは得意技を持っていて欲しいと思います。

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掲載日 : 2000.02.25
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