精霊と女性の国 北タイ

2 高床式住居
 タイの伝統的な家は木と竹でできた高床式住居だ。床下はタイ人の大人がふつう立って歩けるほどの高さがある。外から階段を上って行くと木戸があって、そこが家の入り口になっているが、村では昼間、家に人がいる間は開けてある。
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 入り口を入った所には棚があって、素焼きの壷が2つ置かれている。壷は井戸から汲み上げた水で満たされていて、その縁にひしゃくが伏せて立て掛けられている。外から帰って来た人や訪ねて来た人はここでひしゃくに水を汲み、一口飲んで、残った水を手にかけて洗う。壷の水は外気の熱にぬるめられることもなく、いつもひんやりと冷たい。
 訪ねて来た人はそれから一段高くなった居間の床のへりに腰掛けて、家の人と話し始める。ちょうど日本で一昔前までそうだったように、隣人が庭から入ってきて縁側に腰を下ろすと、家人が奥の居間から縁側に出てくる、そんな感じである。
 タイの家の床の高さには3つのレヴェルがある。
 低いレヴェルの床は入り口から台所につながるゾーン。台所の床には大きな水甕と七輪が3つほど。もち米を蒸す蒸し釜や鍋。香辛料を打ちつぶす小さな石臼と杵。
 洗い場では洗濯もすれば、男性たちが簡単に水浴びをしたりもする。低いレヴェルの床は水をザーザー流すとそのまま通して、1.5メートルほど下の地面に落とす。
 真中のレヴェルは家の大部分を占める居間。ここで食事をしたり、人を迎えたり、朝起きてから夜寝るまでの家にいる時間のほとんどを過ごす。子どもたちが眠るのもここだ。
 高いレヴェルは家の北側にある2つの寝室。「大きい寝室」は両親の寝室、「小さい寝室」は娘夫婦の寝室である。寝室は壁で囲まれているが、他は大人が外を見下ろせるくらいの高さの腰壁なので、その上を風が吹き渡る。
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 タイの家の中の空間は、高さと方角によって価値づけされている。低いレヴェルから上がるにしたがって不浄から浄へと聖性が増し、また日本と同じように方角にも価値と意味が与えられている。北は聖なる方角で縁起がよく、東もまたよい方角。他方、南や西は俗な方角である。
 寝室は北側の高いレヴェルに、中でも家の精霊を祭る棚は「大きい寝室」の北側の壁の上方に造られる。反対に台所や洗い場は南や西の低いレヴェルにある。
 外から階段を上り、この高床式住居に足を踏み入れると、焼けつくような日差しを遮って屋根が作る深い影と渡る風が心地よい空間を作っていて、ホッと一心地つく。それに比べて地上に直接建てられる新しいタイプの家は、コンクリートの壁で被われ、地面の熱を床に伝えて暑い。

 

川野美砂子

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