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23 「家族」とは何か この中で長島が「家族を普遍的に理論化しようとする試みが成功しなかった例」として挙げている中根千枝は、どの社会にも必ず「家族」と翻訳される単位があって、それを表現する用語は「火」、「かまど」を語源とするものが圧倒的に多い、と述べる。つまり「家族」は語源的に「食を共にする集団を意味する」というのである。 タイ語でも「家族」と翻訳される言葉に「クロープ・クルア」という言葉があって、これは元来「かまどを囲む」という意味である。日本語にも「同じ釜の飯」という言い回しがあって、「同じ釜の飯を食った仲間は家族同然だ」というような言い方がされる。けれど私が住んでいた北タイの村の人々は「クロープ・クルア」という言葉を用いず、またこれに替わる「家族」に相当する言葉も使っていなかった(18参照)。 それとは違って人々の生活の中で重要な意味をもっていた「キン・ドゥアイ・カン」という言葉は、確かに「一緒に食べる」と翻訳されるが、それは「同じ米倉」の米を食べることを意味し、字義通りに受け取るとこの言葉が指すと思われる「同じかまど」や「同じ釜」の範囲をはるかに超える人々に、共同のアイデンティティを与える働きをしていた。 川野美砂子 ‖精霊と女性の国
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